Qwertyの部屋

アコライト、時々、相談所。アヴァベルオンラインをプレイしつつ、バーチャルの世界からリアルを考えるブログ。

ゲームの中の女性差別 〜オンラインゲーム研究その5〜

こんにちは。Qwertyです。

 

今回も前回に引き続き、

 

Play Between Worlds

Exploring Online Game Culture

T. L. Taylor

 

が題材です。

今回は、性別や人種による差別に関する事を書いていきます。

 

ゲームの世界で差別なんて…?

と思われるかもしれませんが、著者はアバターに関してそれがあるのではないかと述べています。

EverQuestでは、いくつかの種族の中からアバターの原型を選ぶのですが、その中のEruditeという種族は、肌が濃い茶色です。この種族は他の種族よりも賢さの初期値が高く、魔法系の職業になるのにアドバンテージがあるのですが、その点に関しゲームの製作サイドは、あまり魅力的でないかもしれないと予想される種族には特殊な能力を付けた、と述べています。

 

これってつまり、Eruditeが人気のないアバターということ…?と言いたくなるというわけです。種族によってゲームが始まるホームタウンが違うようですが、この種族の街は辺鄙な所にありますし、そもそもHumanのアバターが白人のみ、となってくると、確かに人種差別的な印象を受けなくもありません。

ふつうにゲームをプレイしている上で、人種などという話は全く私のアンテナには引っかからないのですが、やはりアメリカなどでは人種差別が根強い問題なのでしょう。

 

もう一つの性別に関する話題はとても興味深いです。まとめを除く5章のうち、まるまる1章分がこの話題に割かれており、著者の熱意を感じます。

 

アバターは男女両方とも存在し、特に能力差はありません。人種以上にどこに差別があるのか分かりにくいかもしれませんが…。

 

著者は、女性のアバターが、セクシャルな面を強調され過ぎていると述べています。これは女性のために作られたわけではなく、男性の顧客に焦点を絞って作られた、男性のための女性アバターなのだ、と。

 

まあ確かに、やたらと露出が多い女性アバターって、あまり女性は使わないような気もします。現実にそういう服を着る女性もいなくはないですが、やっぱり男性を惹きつけるためのもの、と言われても仕方がないような。

 

これと同じく、「女性向けゲーム」というのも社会が勝手に決めたものである、と著者は語ります。

女性はそもそも勝負自体を好まない、だからコミュニケーションなどを重視したゲームを作った方が女性には売れるはずだ、という考え方は、本当に女性の嗜好を反映しているのか疑問だとのこと。日本でも着せ替え系のゲームなどが販売されていますが、そのせいで「こういうのをやるのが女の子」というステレオタイプが改めて強化されてしまうという事のようです。

 

ゲームの中では、現実世界では味わえない自由を感じる女性もいるとのこと。現実では女性の一人旅は危険が多いですが、ゲームの世界ではモンスターさえ薙ぎ倒せれば特に問題はなく、そのモンスターも男女平等に襲ってきますので、女性ならではの危険は特にありません。

 

男女差については色々と議論がありますが、身体能力と出産についてはさすがに異論は出ないかと思います。どんなフェミニストでも、「スポーツでは男女の区別をせず、同じ基準で競うべきだ」「男にも出産させるべきだ」とは言わないでしょう。前者のような事をしたら女性アスリートが表彰台に上がる機会が減ってしまいますし、後者は解剖学的に不可能です。

 

この記事がかなり勉強になりましたが、

 

ヒトのセクシャリティの生物学的由来

長谷川寿一

https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2017/11/79-5-8.pdf

 

配偶努力と養育努力の間のトレードオフというのはとても興味深いです。

女性は妊娠・出産をし、さらに授乳もするので、どうしても養育努力が高くなるとのこと。

 

狩猟採集、いわゆる肉体労働がメインだった時代は、男性が働く方が効率的だったと思われます。

でも、最近は頭脳労働が増えて来ています。男性脳・女性脳という話はさておき、解剖学的な差はありますし、学習障害でも男女で出やすい分野が違いますから、職種によって向き不向きはあるかもしれませんが、「女性は仕事をするより家庭を守る方が適応的」とは言いづらいのではないでしょうか。

 

それでも、出産の前後の問題はまだ残っています。例の医大入試での女性差別も、この点が差別の「理由」として使われていました。

 

でももし、妊娠・出産、授乳が必要なくなったらどうでしょう。もし、精子卵子さえあれば、人工的に受精させて赤ちゃんまで育て上げられる技術が開発されたとしたら。

 

そうなったら、男性と女性との区別はかなり少なくなるでしょう。先ほどの記事によると骨盤の形も妊娠に関係しているようですし、もし妊娠の必要がなくなったら骨盤の形が男性に近くなって、運動能力も変わらなくなるかも。女性蔑視の「理由」は一切根拠を失うでしょう。

 

さらには、男女の思考パターンの差もなくなるかもしれません。さらにさらに、技術が進歩したら、男女でなくても、人間が2人いればその細胞から生殖細胞を作成し、赤ちゃんを「作れる」ようになるかも。

 

そこまで行くと、もはや性別という概念が大きな意味を持たなくなるかもしれませんね。ただ、それは多様性が増した世界なのか減った世界なのか。何とも言えません。

 

技術的には、完全にSFの世界の話というわけでもないと思います。差別解消の行き着く先がここだとすると、ちょっと複雑ですね。

 

あと著作権の話もあったのですが、それはまたどこかで書きますw

 

ではまた(*゚▽゚)ノ